• はじめに…
  • 認知症は必ず予防できるのですか?…
  • どの認知症が対象ですか?…
  • どのくらい続ければよいですか?…
  • [方法1]どのような運動に効果がありますか?…
  • [方法2]どのような食事に効果がありますか?…
  • [方法3]どのように頭を使うと効果がありますか?…
  • [参考1]継続にはコツがあります。…
  • [参考2]運動には副次的な効果があります。…

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    はじめに

    これからご紹介する認知症予防は、理論的な解説が中心になっています。IBCコミュニケーションズは、より多くの方々が認知症予防の方法を体得できるように、これからご紹介する理論を個別の状況に応用し、多くの方々の実践を支援することが社会的な役割であると考えています。


     

    認知症は必ず予防できるのですか?

    認知症の発症可能性を低くすることが趣旨です。
    残念ながら、認知症が必ず予防できる方法は発見されていません。しかし、生活習慣と認知症の発症の関係を調査した疫学研究や動物研究、さらに神経物質の働きを調べた実験研究から、認知症の発症可能性を高める危険因子の存在や、認知症の発症を抑制する働きのある物資の存在が解明されつつあります。認知症予防とは、こうした研究の成果にもとづき、認知症の危険因子を減らし、認知症の発症抑制に効果のある物質を活性化させる方法を実践することを指しています。


     

    どの認知症が対象ですか?

    「アルツハイマー病」が対象です。
    認知症は、脳の神経細胞が機能不全に陥ることによって現れる心理症状・行動症状の総称です。認知症の症状を引き起こす病気はいろいろありますが、なかでも「アルツハイマー病」・「脳血管性」・「レヴィー小体病」・「前頭側頭型」は、4大認知症と言われています。
    このサイトで対象とする認知症は、「アルツハイマー病」です。なぜなら、認知症に占める「アルツハイマー病」の割合が、他に比べて極めて高いからです。また、「アルツハイマー病」は「脳血管障害(脳卒中)」と同じように生活習慣の改善によって発症可能性を低くすることが可能と考えられています。塩分を控えた食生活に「脳血管障害(脳卒中)」の予防効果があったように、生活を変えることで「アルツハイマー病」になりにくくなる可能性があります。


     

    どのくらい続ければよいですか?

    生活の習慣化を目ざします。
    「アルツハイマー病」の予防は、生活習慣病の予防とよく似ています。生活習慣病の予防が生活習慣の改善そのものであるように、「アルツハイマー病」も予防効果の高い生活習慣を身につけ、それを続ける必要があります。それは以下の理由からです。
    「アルツハイマー病」は、脳の神経細胞にベータ・アミロイド(Aβ)というタンパクが蓄積し、やがて神経細胞が死滅する病気です。神経細胞の死滅する場所(海馬・前頭前野)に対応して、「アルツハイマー病」特有の心理症状・行動症状が現れると考えられています。このベータ・アミロイド(Aβ)は、早いと40歳代から脳に蓄積が見られはじめ、90歳代の8割は脳に蓄積があると言われています。一方、一般的に「アルツハイマー病」が発症するのは60歳代からと言われており、90歳代で発症するのは2割と言われています。このように、「アルツハイマー病」の症状はベータ・アミロイド(Aβ)が長く蓄積した結果であると考えられます。したがって、ベータ・アミロイド(Aβ)を脳につくらない・溜めない生活のしかたが重要になります。さらに、脳にベータ・アミロイド(Aβ)が蓄積していても症状として現れないようにすればよいという考え方もあります。ベータ・アミロイド(Aβ)と共存するためには、日々の生活のしかたが重要になります。


     

    [方法1]どのような運動に効果がありますか?

    中程度の強さまでの有酸素運動がおすすめです。
    有酸素運動には、「アルツハイマー病」の発症を低くする効果があると言われています。まったく運動をしない集団に比べ、早歩き程度の運動を週に3回以上行っている集団は、発症の危険度が2分の1という疫学研究があります。また、遊具で十分に運動できる環境にあるマウスは、脳内に生成されるベータ・アミロイド(Aβ)が相対的に少なく、かつ蓄積されたベータ・アミロイド(Aβ)が減るという実験研究もあります。
    有酸素運動にはいろいろありますが、その代表格はウォーキングです。どのような有酸素運動を選ぶにせよ、有酸素運動は中程度以下の運動強度が望ましく、それを超えると却って脳の神経細胞にストレス性の障害を与えることになるので注意が必要です。中程度の運動強度の目安は、ウォーキングであれば話しながら歩けるくらいの歩速、「ややきつい」かなと感じる程度の歩速です。運動強度に関しては、楽と感じる運動でも脳の血流は十分という脳生理学の研究も報告されています。
    有酸素運動は週に5日以上、1日30分以上というのが目標です。必ずしも30分間続ける必要はなく、5分以上で脳の血流は十分な状態に達するという脳生理学の研究があります。合計して30分以上になることを目ざします。


     

    [方法2]どのような食事に効果がありますか?

    抗酸化作用の高い栄養素を摂取することがおすすめです。

    ビタミンE・C・ベータカロテンの豊富な野菜・果物を食べましょう。

    ビタミンEを相対的に多く摂取した集団は発症の危険度が約4割、ビタミンCの場合は3割、低くなるという疫学研究があります。また、ベータカロテンにもその効果が期待されています。これらの栄養素は、フレッシュ・ジュースにして冷蔵庫に保存しても効果が変わらないということです。

    ポリフェノールが注目されています。

    茶・野菜・果物に含まれているポリフェノールは、発症の危険度を下げる効果があると言われています。ポリフェノールが豊富に含まれている赤ワインは、週1回以上飲む集団の発症危険度が、まったく飲まない集団に比べ約5割であるという疫学研究があります。ただし、ワインを飲み過ぎるとアルコールの過剰摂取が原因で健忘症・認知症になるので気をつけましょう。
    また生化学の実験研究では、緑茶を1日3杯以上飲む集団の発症危険度は、それ未満に比べ約5割という結果が得られています。緑茶の効果はウーロン茶よりも高く、コーヒーではこうした効果は得られていないということです。

    青背の魚に含まれるDHA・EPAに効果があります。

    1日あたり3切れ程度以上の魚肉を食べる集団の発症危険度は、それ未満の集団に比べ約3割という疫学研究があります。抗酸化作用はありませんが、青背の魚の魚油に豊富に含まれているDHA・EPAに効果があると言われています。たとえば、マウスにDHAを大量投与すると、脳内のベータ・アミロイド(Aβ)が7割以上減少するという実験研究があります。


     

    [方法3]どのように頭を使うと効果がありますか?

    認知機能の働きを高める頭の使い方があります。脳内の神経細胞間のネットワークを増やしたり太くして、「アルツハイマー病」の影響を受けにくい脳にすることを目ざします。

    エピソード記憶・注意分割機能・計画機能を強化しましょう。

    「アルツハイマー病」の進行とともに本人のなかで知らず知らずのうちに低下していく脳の働きが、「エピソード記憶」・「注意分割機能」・「計画機能」の3つです。「エピソード記憶」は体験したことを覚えておく機能、「注意分割機能」は同時に複数のことに注意を振り向ける機能、「計画機能」は目標を達成するために段取りをつける機能です。これらの機能が落ちていくと、日々の生活に小さな失敗が増えていき、当たり前のことが思い通りにできなくなっていきます。3つの機能を磨くことによって、ベータ・アミロイド(Aβ)が脳に及ぼす影響を抑えることを目ざします。

    頭を使わざるをえない活動を選びましょう。

    定型化した課題や単純な課題、一方向的な課題はじきになれてしまい、身体が勝手に反応するようになります。以下の3点をおさえて、頭を使わざるをえない活動を実践しましょう。

    [達成の明確な活動]
    ダーツなどのように、ルールを覚えたり結果を覚えておくだけでなく、勝ち負けや行動の成否が明確な活動を選びましょう。ゲームのようにみんなで競い合うと、結果に対する集中力が高まります。

    [手順の多い活動]
    フランス料理などのように、たくさんの手順を組み立てて達成する活動を選びましょう。事前に周到な準備をし、準備したことをしっかり頭のなかに入れて本番に臨む活動は、頭をたくさん使います。

    [臨機応変な対応が不可欠な活動]
    麻雀や旅行などのように、その時々の状況によって対応を変えざるをえない活動を選びましょう。臨機応変な対応をともなう場面に直面すると、脳は否が応でも活性化します。


     

    [参考1]継続にはコツがあります。

    ここでは、「続けるためのコツ」と、「続けやすい活動を選ぶコツ」の2つを紹介しましょう。

    続けるためのコツ

    ウォーキングを例に、「続けるためのコツ」を5つ、ご紹介します。

    [道具を準備する]
    歩数計を持つと、ウォーキングの習慣化が促進されることがわかっています。杉並区では、ウォーキング・イベントに参加した区民に歩数計を配布したところ、ウォーキングをしていない参加者のほぼ5割が7か月後にウォーキングを行っていました。そして、その6割が、続けている理由に歩数計を身につけたことを挙げていました。フィットネスクラブでは、6か月続いた会員は、その後も継続する割合が高いと言われています。6か月以上続くことは、習慣化の一つの目安と言えます。
    道具や環境を準備することは、行動を始める第一歩です。

    [記録をつける]
    歩数計で一日の生活歩数(起床から就寝までの歩数)を確認し、それをグラフにつけて、一週間ごとの累積グラフをつくっていきます。早歩きの分数も同様に併記していきます。また、ウォーキングに関わる簡単な備忘録も書き入れます。こうすることによって、結果を視覚化するとともに、結果に影響を及ぼすできごともわかるようにします。ダイエットでもやはり、体重と食べた物・カロリー・食事に関する備考を記録するなど、同様の方法を勧めています。
    結果のフィードバックは、行動の定着を促す効果があります。

    [少しずつ目標を伸ばす]
    初めから高い目標を掲げると、気持ちが高揚しているときにはムリがききますが、長く続けていると次第に我慢を重ねるようになり、ついには息切れを起こし、挫折することになります。自分にとってごく簡単なことから始め、気持ちや身体が慣れたらほんの少しずつ難易度を上げていくことが大切です。運動習慣のない場合、1日5分のウォーキングから始め、次に週あたりの日数を少しずつ増やしていきます。こうして気持ちや身体を慣らしていき、それから1日あたりの時間を少しずつ増やしていきます。
    行動科学の理論では、小さな目標の達成を繰り返しながら目標を少しずつ伸ばしていくことを「スモール・ステップ」と名づけています。

    [ついでに行う]
    多くの方々は、すでに一日の生活のしかたが決まっているでしょう。そのため、そこに新しい生活習慣を加えることが時間的に難しかったり、生活のしかたを変えることに抵抗を感じることが多々あるに違いありません。そこで重要になるのは、「ついで」の発想です。杉並区でウォーキング・イベントを実施して、7か月後に、ウォーキングをしていない参加者に追跡調査を行ったところ、イベント後にウォーキングを始めた参加者の7割が用事の「ついで」に歩いていると回答しました。
    通勤途中に早歩きをする、頭を使う活動を趣味活動に選ぶなど、いろいろな工夫が考えられます。

    [仲間をつくる]
    ウォーキングを続けていると、単調なことの繰り返しでだんだん飽きてきます。身体の不調、天候の不順など、それまで習慣的に続いていたことに水を差すようなことが起きると、再び歩き始めるのがおっくうになって、中断する期間が延びていくことがあります。しかし、仲間がいると、声をかけられるのでやらざるをえない、不調のときなどに経験的な助言がもらえる、仲間の行動が課題解決の目安・参考になる、多少なりとも負けたくない気持ちがわくなど、いろいろな集団効果が期待できます。
    集団効果を高めるためには、少人数の仲間で活動することをお勧めします。

    続けやすい活動を選ぶコツ

    続けるコツを身につけても、活動の選び方が間違っていたら続きません。「続けやすい活動を選ぶコツ」は、2つあります。

    [楽しいこと・興味のあること・役に立つこと]
    「楽しくなければ続かない」というのは、継続の大原則です。苦行は、続けること自体が修行であると言えます。そこで、「楽しいこと」を見つける手がかりですが、「興味のあること」で、まだやれないでいることがあるとすれば、それが狙い目です。身体を使う、頭を使うという観点から、「アルツハイマー病」の発症可能性を低くする効果の可能性を検討してみましょう。
    そして、それが「役に立つこと」であれば、なお継続効果が期待できます。社会貢献など、第三者から評価される活動は長続きしやすくなります。また、極端なことを言えば、日々の仕事など、それをしなければ生活が成り立たないことであって、しかも、それをすれば生活の質が高くなり仕事もはかどるとなれば、自分にとっても周囲や世間にとっても役立つことになるでしょう。いずれにせよ、活動の結果が精神的な報酬にとどまらず、社会的・物質的な報酬となって自分に返ってくるような活動を選ぶことも、コツと言えます。

    [仲間とできること]
    続けるためのコツの第5に、「仲間をつくること」を挙げました。仲間のいる活動を選べば、続けるためのコツも一緒に手に入れたことになります。
    また、人との結びつきの程度が認知症の発症率に影響を及ぼすという研究も報告されています。閉じこもりの生活をしている集団は、親族・友人とつながっている生活をしている集団に比べ、認知症の発症可能性が8倍も高いということです。


     

    [参考2]運動の副次効果を活かしましょう。

    ウォーキングなどの有酸素運動には、さまざまな健康づくりの効果が期待できます。

    [脳の血流の増大]
    有酸素運動(ウォーキング等)をすると、脳の前頭葉や海馬の血流が増し、新陳代謝もよくなります。前頭葉は、注意分割機能や計画機能など認知症になりかかっているときに低下していく機能を担っています。また、海馬はエピソード記憶に関係している場所です。

    [高脂血症(高コレステロール)や高血圧の改善]
    有酸素運動(ウォーキング等)をすると、高脂血症や高血圧が改善されます。これらの症状があると、脳梗塞などによる脳血管性の認知症の危険性が高くなります。また、最近の研究では、長年高脂血症が続いているとアルツハイマー型認知症になりやすいことがわかってきています。

    [睡眠の改善]
    有酸素運動(ウォーキング等)を夕方すると、眠りがよくなります。眠りがよくなると脳の生理的リズムが整い、注意力や記憶力が改善するということがわかっています。睡眠に問題のある方々は、夕方の時間(寝つく5時間前)に運動すると効果的です。

    [心肺機能の改善による血液循環の効率化]
    有酸素運動(ウォーキング等)が習慣化すると、肺から取り入れた酸素やエネルギーを効率的に循環させることができるようになります。スタミナがついて疲れにくくなります。

    [肥満や糖尿病などの生活習慣病予防]
    1日30分の有酸素運動(ウォーキング等)をすれば、約150キロカロリーのエネルギーを燃やし、肥満の防止効果があります。また、糖尿病や脳卒中などの生活習慣病やメタボリック症候群が防げます。

    [足腰の鍛錬による転倒予防]
    有酸素運動(ウォーキング等)は、足や腰の筋肉を使います。歩幅をやや広くして歩くと大腿(だいたい)骨と背骨を結んでいる大腰(だいよう)筋が鍛えられ、転びにくくなります。

    [骨粗しょう症の予防]
    有酸素運動(ウォーキング等)は、体重を支えながら移動するので、骨に適度の刺激を与え、骨密度の減少を防ぐことがわかっています。

    [憂うつな気分の解消]
    有酸素運動(ウォーキング等)は、脳内に気分を良くする物質の分泌を促すので、うつ症状を改善する効果があります。